気づけば血がにじみそうなくらいに唇を噛み締めて彼のプレイを見ていた。
いつしか興奮は、じりじりするような渇望感へと変化していた。
最初はいつもより不二の歩みが遅く感じる事を気のせいだと思っていた。
でも彼に歩調を合わせるうちに先頭集団と距離が開き始めたことから、どうやらそれは気のせいでなかったようだと悟り、疲れでもしているのだろうかといるのかと不二の横顔を伺えば、真っ直ぐに前を向いていた視線がリョーマを捕らえた。
「どうしたの?」
そう聞き返してくるその顔は別段疲れている様子もなく、きっと何事かを考えていたために歩みが遅れているのだろう、リョーマはそう考えた。
「皆、先に行っちゃいましたよ。」
「・・・そうだね。」
「ちょっとペースアップしないとはぐれるっすよ?」
そう言って彼の先に立って歩き始めたが、ふと振り返れば不二はその場に立ち止まったままで、リョーマは小首を傾げる。
と、不意にくるり、とリョーマに背を向けて、不二が今来た道を戻り始めた。
「・・・先輩?」
いきなりの行動に驚いたリョーマがその背中に声をかけるが、彼は振り向きもせず、その歩みが止まる気配はない。
「ち、ちょっと!」
慌ててその背中を追いかけ、その腕を捕まえる。
「一体どうしたんすか??」
ようやくその足を止めた不二の顔を覗き込むようにして訊ねれば、彼はその瞳をすっと細めた。
「先輩??」
「ねぇ、このままどこかへ行こうか?」
「え?」
いきなりそう言われ戸惑うリョーマにくすり、と笑うと不二は彼の耳元に唇を寄せる。
「・・・っ!」
そのまま耳を唇で挟まれ、軽く歯を立てられ、リョーマは思わぬ刺激に身体を縮める。
慌てて不二を振り仰げば、自分を捉える流し目は明らかにある色をたたえていて、
リョーマは目をしばたいた。
「どこか・・・ってどこへ行くんすか?」
思わぬ刺激に身内がざわざわし始めるのを感じながら、そう訊ねた声が掠れる。
「どこでもいいよ。早く二人になれれば。」
それに気づいたのか不二はその笑みを深くして、リョーマの瞳を覗き込んだ。
「どこでも・・・って」
「おい、不二に越前!どうした??」
と、前を歩いていた大石が集団から遅れている二人に気づいたらしく、振り返って声をかけてきた。
「うん、ちょっとコートに忘れ物してきたらしいんだ。」
そんな大石に不二は笑いかけながら言葉を返す。
「探してくるから先に行ってて。」
「忘れ物って大事な物なのか?オレも行こうか?」
「大丈夫だよ。越前を連れて行くから。」
心配そうに声をかけてくる大石にそう返すと、不二は今度はリョーマににっこりと笑いかける。
「行き先は決まったね。」
「え?」
「じゃ、行こうか。」
「あ、ち、ちょっと!!」
そのまま手を引かれ、否応なく今来た道を早足に戻ることとなり、何だかおかしな事になってきたな、とリョーマは肩をすくめた。
先ほどまで試合をしていたコートは、綺麗に後片付けされており、がらんとしたただのコンクリートの広場になっていた。
「・・・何だかさっきまでの事が嘘みたいだね。」
先ほどの喧騒とうって変わって静まり返っているそれを裏手のフェンス越しから眺めつつそう言う不二の横顔を伺えば、その視線に気づいたのか、彼は小首を傾げるようにしてリョーマを見下ろし、ちょっと笑った。
「よかったよ、君の試合。」
「・・・あんたの試合もよかったっすよ。」
その笑みにリョーマも先ほどの不二の試合を脳裏に浮かべつつそう口にする。
結局負けたとは言うものの不二の力は息を呑むほどであったし、滅多に見られない彼の姿を目の当たりにして胸がざわめくと同時に、対戦相手に対して嫉妬めいた気持ちすら起こったほどだ。
「どう?試合してて気持ちよかった??」
と、不二がその目を細め、一歩リョーマに歩を寄せた。
「最高、とは言いがたいっすね。」
はっきりしない勝ち負けが気持ち悪い。そう思うと同時に、人を食ったようなあの笑顔が脳裏に蘇りかけ、リョーマは眉をしかめ、慌ててそれを振り払おうとした。
「・・・僕もだよ。」
「え?」
低く呟くような声と共に胸の辺りを押され、不意をつかれたリョーマはよろめいてその場に尻餅をついた。
「ちょ・・・何するんすか!?」
立っていた場所は柔らかな芝生の上なのでさほどの痛みは感じなかったが、いきなりの行為にリョーマが眉を寄せれば、そんな自分を見下ろして、にっと不二が笑った。
「やっとふたりきりになれたからね。」
そう言ってリョーマの身体を膝立ちで跨いだ不二は、その手を彼の顔にと這わせた。
「先輩・・・?」
戸惑ったような声を上げるリョーマの頬を手のひらで包めば、まだあどけなさを残したその瞳が自分を見つめる。
まだまだ幼い、でも、とてつもない光を秘めた灼熱の太陽。
この光が眩しすぎて、激しく自分の胸をかき乱す。
「せんぱ・・・っ!!」
湧き起こった激情のままに激しく唇を奪えば、驚きからか腕の中のその身体は小さく撥ねる。
「・・・っ・・・ん!」
自分が送り込む刺激に激しくなる息づかいがわかり、不二はたまらないような気持ちになる。
このまま小さな天才を壊してしまいたい、こうして自分の手に収めたままで・・・
「!」
と、くるり、と身体を反転され、背中に硬い物が触れる。
その目を開ければ、今まで組み敷いていたリョーマが逆に自分を組み敷き、見下ろしていて。
「こんな所で誘ってくるなんて、ずいぶんと興奮しているみたいっすね?」
「・・・あ・・・」
その双の瞳は、先ほど見た野性の光を秘めており、不二は軽く息を呑む。
「さっきから煽られっぱなしでちょっとムカつくんすけど??」
「越前・・・」
「責任、取ってもらいますよ。」
そう言ってにやり、と笑うとリョーマは不二のシャツのボタンを引きちぎらんばかりの勢いで外すと、曝け出された鎖骨にいきなり歯を立ててきた。
「っっ!!・・・ここでするの?」
「よく言うよ。自分から誘ったくせに。」
「・・・そうだね。」
今更・・・という顔をリョーマから向けられ、不二は苦笑し、目を細める。
「ね・・・キスして?」
「どこに??」
「・・・あ!」
首筋に唇を押し付けられ、同時にちり、とさすような痛みが走り、不二は思わず声を上げた。
「それともここ??」
「っ!」
今度は胸元に痛みが走り、不二は身を捩りかける。
と、そうはさせないとばかりにリョーマは不二の両手首を掴みあげ、地面に押し付けるようにして固定した。
「あ!」
いきなりあらわになっている乳首に唇をあてがわれ、強く吸われ、走りぬけた快感に不二は声を上げた。
そんな彼に目を細めながら、リョーマは舌の上で硬くなったそれを転がせば、背中を仰け反らせ、不二は身体を震わせる。
「あっ・・・ああ!」
「声、大きいっすよ、先輩?」
「・・・あ・・・」
そう言われうっすらと目を開ければ、いたずらっぽいまなざしが自分を見下ろしていて。
今、自分達のいる場所の回りは、比較的背の高い植え込みが生えている。
コートの裏手であるから、この場所は人目にはつきにくいが、でも、それでも全く隠れてしまうわけではない。
現に不二の視界の端には生い茂る緑と共にコートの端が映っている。
「ま、オレは構わないけど?」
でも、視界の大半を占めるリョーマはふてぶてしく笑っており、そんな彼に不二は薄く笑った。
「ホントに平気なの?」
「え??」
「もし誰かにこんなところ見られたら、終・わ・りだよ??」
全国への切符を手に入れたばかりで、こんなところを見られたらただではすまないだろう。同時に自分達のただならぬ関係も暴かれることとなる。
ことさらそれを強調するように言えば、リョーマが軽く目を見開く。
「・・・そうだね。バレればあんたもオレも終わりだね。でも・・・」
「!っ!!!」
次の瞬間、下着ごとズボンを剥ぎ取られ、不二は息を呑む。
「でも、そんな事言われても今更止められないよ?」
曝け出した不二の下半身を見下ろし、リョーマはにやり、と笑う。
「いい眺め。」
「・・・っっ!!」
そんな彼の言葉と視線にさすがに恥ずかしさを感じ、身を縮めようとした不二だったが、その動きを制するようにリョーマは彼の下肢に手を這わせる。
「・・・あんたももうこんなになってるし。」
「あっっ!・・・う!」
いきなりそれを握りこまれ、そう囁かれ、不二は頬に血が上るのを感じる。
「え・・・ちぜん・・・っっ・・・あ!」
手のひらでくるまれ、つっと指でなぞられて、その刺激に声を上げれば、リョーマの得意気な笑みが深くなる。
「でも、あんただってそんな事気にもしてないんでしょ?こうやってオレを誘うくらいなんだから。」
「・・・え・・・」
「あんたってさ、自分がこうだって思い込んだら絶対そうするよね?相手や周りなんかお構いなしにさ。」
リョーマのその言葉は不二の目を見張らせる。
笑っているだけで誰もが自分の事を、“綺麗な”、“仲間思いな”、“優しい”人間であると評価してくれた。
誰がなんと言おうと思おうと構わなかったが、でもそういう事にしておけばずいぶんと楽な面もあったから、あえてそのイメージを裏切るような真似はせずにきた。
でも、彼はそんな周囲とは違っていた。
彼にはそんなイメージは最初から通用しなかった。
それどころか、偶然か、それとも故意からなのか、時に不二自身も気づかないような核心に切り込んで迫ってきて。
それは少なからず自分を驚かし、プライドを傷つけ、こんな子供にどうして・・・と強い苛立ちを覚えた。
それが他人に感情を乱された初めての経験であり、彼を意識し始めるきっかけだった。
「・・・そう・・・?」
手を伸ばし、リョーマの頬に指を這わせば、彼は軽く目を見開く。
この目が自分の隠している面、そして知らない面を見抜いている。
こうして自分を見下ろすその顔はあどけなさすら残して可愛らしいのに・・・と、不二は目を細める。
「そうだね、僕は君が欲しいよ。」
彼が欲しい、それはもう抑えようもなくて。
そんな感情のままにこんな小さな、しかも少年に淫らな関係を強いている自分が途方もなく罪深い人間に思えた。
と、同時にぞくぞくするような興奮を覚える。
「嬉しい事言ってくれるんすね?」
「・・・越前・・・」
そんな自分に無邪気ともいえる笑みを向けるリョーマが愛おしくて抱きよせれば、深く唇を重ねられて。
「・・・っ・・・ぅ・・・はぁ・・・」
呼吸を奪うほどの激しいキスに頭の芯が痺れていく。
お互いの唇からもれる濡れた音がじわりと耳を犯し、身体が熱くなっていくのを感じる。
「・・・何?興奮してるの??」
それは中心を握りこんだままのリョーマに伝わったらしい。
ゆっくりと唇を離した後、濡れたままのそれを耳に押し当てるようにして囁かれ、不二は頬に血が上るのを感じる。
「さっきより大きくなってるっすよ?」
「!う・・・っっ!!」
いきなりそれをするり、となで上げられ、軽く先端を捏ねられる。
思わず声を上げ、喉をそらせれば、リョーマの唇が首筋を優しく噛んだ。
「あ、ああ・・・」
「すっかりその気っすね?」
彼はこの状況を楽しんでいるようで、実に生き生きと嬉しそうに不二を覗き込む。
「ね、あんたのイクところ、見たい。」
「・・・え・・・」
「いいでしょ?ほら??」
「!あっっ!!くっ!!!」
と、下肢をまさぐる手が激しさを増し、不二はリョーマから与えられる快感に身もだえする。
「あああっっ、えちぜ・・・だめっっ・・・!」
「その顔、すごくいいっすよ。色っぽい。」
「ば・・・かっ・・・あ!」
「そんな事言っても身体は素直なんだけど?」
リョーマの言うとおり、濡れた音は先ほどよりも高くなって辺りに響いており、不二は耳を染める。
「!あっ」
「そろそろみたいっすね。」
「う・・・あ・・・っっ」
リョーマの言うとおり、限界はすぐそこまで来ており、不二は大きく喘ぐ。
「我慢しなくていいよ、ほらっ。」
「!あっっ!!!」
煽るようなリョーマの声と同時に、弄ばれている箇所の手の動きがぐっとリアルに迫ってきて、一瞬、頭の中が白くなる。
「ふっ・・・う・・・あ!!!」
自分の放った生暖かい物が腹へとかかるのを感じながら、身体を食むその快感に不二は熱い吐息を漏らしつつ身をゆだねる。
「先輩・・・」
久しぶりに見る不二の快感に震えるその顔は、やはり何よりも美しく艶めかしくて、リョーマはごくりと喉を鳴らした。
早くこの身体を征服したい。
息苦しいような思いが一気に胸に広がり、リョーマはまだ荒く息をしている不二の身体を乱暴にひっくり返し、地面に四つんばいにさせる。腰をつかみ、引きずるように引き寄せて高く掲げさせると、リョーマはためらう事なくその秘所へと舌を這わせた。
「!や!あああ、ぅ・・・」
湿った音と共にそこが濡らされていく感覚に不二が思わず声を上げ、身を捩れば、逃がさないとばかりにがっしりと腰をわしづかみにされ、唇を押し当てられる。
「や・・・あ・・・あっっ、」
一度吐精したせいで身体が敏感になっているのに加え、奔放に動き回るリョーマの舌先に早くも身体が熱くなってくるのを感じ、不二は恥じらいにかぶりを振る。
「え・・・ちぜん・・・もう・・・止めて・・・っ」
「・・・止めてって、それは早く先に進めって事っすか?」
「え・・・あっ・・・!」
と、今度はそこに舌先とは違う圧迫感を感じ、それと同時に、リョーマの指が体内に進入してくるのがわかり、不二は思わず身体を強張らせる。
「そんなに締めないでよ、先輩?」
「あ・・・あう・・・っっ!あ」
中をかき回す指の数は次第に増えていき、それと同時にどんどん大きくなっていく身体の疼きに不二はたまらず腰を蠢かし、大きく吐息を漏らす。
「・・・越前・・・」
体内を焦らすように探る指の動きがもどかしくて、もっと満たして欲しくて不二は背後のリョーマを潤んだ目で斜め見た。
「もう・・・して?」
「先輩・・・」
「早く・・・っ!」
「・・・わかったっす。」
思いがけない不二の催促に、応じた声がかすれる。
ズボンの前をくつろげれば、熱くなっている自身が飛び出すように現れて、思った以上に余裕をなくしていた事に気づかされ、リョーマは苦笑する。
「いきますよ。」
うっすらと口をあけている不二の秘所へこれ以上はない程硬くなった自身の先を差し入れれば、そこはもっと奥へと引き込もうとするかのようにうねり、ぎゅっと締め付けられる。
その甘美な感覚にリョーマの理性は弾け飛んだ。
「!あ・・・う!!」
「く・・・っ!」
押し戻されそうになるほどの強い締め付けに逆らうようにリョーマは一気に身体を進めた。
「!ひ!あっっ!!」
「・・・入ったっすよ?」
「う・・・ああ・・・」
そう告げてやれば、全身の力を抜き、地面に突っ伏してうめき声を上げる不二。
その背中をリョーマは宥めるようにさすり、背後からそっと抱きしめた。
「こんなとこ見られたらそれこそ終わりっすね。」
激しい動きなど何一つしていないのに、額に汗が浮き上がるのを感じつつリョーマはそう不二に囁きかける。
「でもすっげぇ気持ちいい。」
「越前・・・」
後ろを振り返れば、本能に支配されたリョーマの瞳にまっすぐに射抜かれて、ぞくりと身体が震える。
「・・・あんたは??」
その問いにうっすらと笑う事で返せば、リョーマは軽く目を見張った後、笑い返してきて。
「・・・上等。」
「!ああ、う!!!」
いきなり強く腰を打ち付けられ、背中を仰け反らせれば、それが合図となり、リョーマが動き始めた。
「う・・・う・・・あ!」
徐々に激しさを増していくリョーマの動きに腰を合わせているだけで、触れられなくても自分自身が勃ち上がっていくのがわかる。
こんな関係を結んでまだ日は浅いはずなのに、彼から与えられる快楽に慣れてしまった身体。
自分はすっかりこの少年に染め上げられてしまったのだ・・・とぼんやりした頭で不二は思う。
彼を知りたくて始めた関係。その代償は安かったのか高かったのか、でももうそんな事はどうでもよくて。
「!う・・うう・・・あ!!」
「・・・いい声。」
自分の動きに合わせ、腰をうねらせ、高い声を上げ始めた不二にリョーマは目を細める。
「ねぇ、ギャラリー集めようか?」
「・・・え?」
「何もかもぶっ壊してみない?このまんま??」
「・・・あ・・・」
そのリョーマの囁きに、自分達の持つ物全てと引き換えにしてお互いをむさぼるという妄想が頭をよぎり、一気に不二の体の芯が熱くなった。
「!はぁ・・・っっ!!」
一際強く腰を打ち付けられ、不二は大きく息を呑む
「あっ、あっ、ひ・・・!」
「ほら、もっと声、出しなよっっ!!」
自分の中が馴染んできたとわかってか、集中的に弱いところを攻められ、快感に震える不二にリョーマが言葉をかぶせる。
「オレが欲しいんでしょ?」
「え・・・」
「ね、オレを、あんたのものにしたいんだろ?先輩??」
「え・・・ち・・・ぜ・・・っ!」
「そうだ・・・って、言ってよ!」
「・・・っ!あっ!!」
どこか切羽詰ったような掠れたリョーマの声。
それにつられるかのように身体の奥から湧き起こってくる叫びにも似た声を、不二は必死で押し殺すべく、己の腕に歯を立てる。
本当は本能のままに声を上げたい、自分を追い立てるリョーマに応えたい。
でも、そうしたら自分はどうなってしまうのだろう?
いっそ彼がこのまま自分を壊してくれたら。このまま彼に溺れて狂ってしまえたら・・・
こんなスリルは知らない、そしてこんな思いも。
身体を侵すリアルな熱に意識すら怪しくしながら、不二は上り詰めていく・・・
「せんぱい・・・っ!!」
と、激しかった動きが止まり、呻くような切なげな声と同時に熱いものが体内にじわり、と広がるのを感じる。
・・・あ・・・
リョーマが自分の中で達したのだ、そう思った瞬間、たまらないほどの悦びが身体を駆け抜けるのを感じ、不二は微笑しながらうっとりと目を閉じた。
「あんた、ずるいよ。」
「・・・どうして?」
「あれだけ煽っておいて最後は逃げるんだもん。」
「・・・逃げてなんかいないよ。」
どうやら途中から声を殺していた事が気に食わなかったらしく、軽く自分を睨んでくるリョーマに不二は苦笑する。
「でも、今ここで全てを壊してしまったら僕達はずいぶんと退屈になると思って。」
「え?」
「何もかも壊すことはいつだってできる。その方がスリルがあるでしょ?」
そう、壊してしまったら全てが終わる。・・・彼との関係も。
・・・でも、全てが終わってしまう事に自分は耐える事ができるのだろうか・・・?
今なら・・・まだ今なら大丈夫だろう。そう呟く胸が何故かずきり、と疼く。
「・・・壊す事しか選択肢がないの?」
「え?」
「もしオレがまだわかんない不確実な未来よりあんたを取る・・・って言ったら?」
「・・・越前・・・」
“オレが欲しいって言ってよ”
ふと、先ほど彼が口走っていた言葉が脳裏に蘇る。
彼には確実な未来がある。でも、多分今しかないだろう自分達の関係。
それがこの子にはわからないのだろうか・・・?
「・・・ばかな子だね、君は??」
苦笑しつつ唇をリョーマの額へと押し当てれば、そこは未だ汗の匂いを留めていて、ふと先ほどの行為の激しさを思い出させる。
ああして繋がっている時だけが、唯一、彼を自分のものだと思える時。
でも、結局それもどんどん速く、どんどん遠くに飛び立っていく君を止める術にはならないだろう。
今だけ・・・だからこそ、こんなにも愛おしいし、こんなにも欲しいと思うのだろう。
「・・・好きだよ、君が・・・」
いくら触れても満たされない思い、そして狂おしいほどにリョーマを欲する気持ちがこんな言葉ひとつで埋まるとも伝わるとも思えなかったがせめてそう呟くと、不二は今度はその唇をリョーマのそれへとゆっくりと押し当てたのだった。
Fin
いや〜、久しぶりの作品アップです。ですが、これかよ;;;
実は恐ろしい事にこれはカプリブルーの藤代様に誕生日プレゼントと称してして送った代物・・・どれだけ失礼な奴なんだろうか、私;;
全然裏にしてはぬるいけれどとりあえず置く事といたします。期待してきてくれた人・・・石投げないで下さい(T_T)
![]()